藤本の日記(@Kentaro_Fujimo)

大学生の男です

「ゲノムは究極の個人情報である」っていう言葉の、本当の意味。

 

こんにちは、藤本けんたろうです。

 

先月末、大いにバズっていたこの記事↓

medium.com

 

僕も読んで「すげー面白い!」ってなったので、早速、記事の著者の本を購入。

 

 

実際に本を読むと、内容はゲノムを始めとした生命科学がメインというよりも、それを具体例とした今後のテクノロジーと社会の在り方を考えることの方が、著者である高橋さんの伝えたいことかなと感じました。

 

なので構成だけは、そういった著者の意図を一応忖度したうえで作りました。

 

※ただあくまでも、このブログの内容は高橋さんの考えではなく、本を読んだ僕の勝手な解釈です!

 

目次

 

 

1.生物学の復習をしよう!

 

このトピックス以降の土台になる話です。理系とかでガッツリやってた方は、すっ飛ばしてください…

 

まずはキホンのキ。

a)DNA、遺伝子、ゲノム

 

これ、全部違うものなんですが、皆さん分かりますか?

 

僕もセンター試験を受けるときに頭に叩き込んだはずなんですけど、久しぶりに思い出そうとしたら、完全に混乱しました…

 

DNA・・・まずこれは、物質自体のことを指しています。皆さんもよく見たことがある、二重らせんのアレです。細胞の核の中にある、アレ自体をDNAとよびます。

 

遺伝子・・・DNAとの関係性としては、DNAの一部が遺伝子って感じです。すごい雑な例で恐縮ですが、DNAのあの二重らせんの所々に記述されている、「背を伸ばす」「二重まぶた」といったその人を構成する情報を指して、遺伝子と呼びます。

 

ゲノム・・・遺伝子は、DNAの一部でしかありません。つまり、DNAには他にも僕たちの体にとって、大事な情報が記述されているわけです。そういった遺伝情報の全てを指して、ゲノムと呼びます。DNAは物質ですが、ゲノムは情報です。

 

ここらへんに関しては、NHK高校講座の生物基礎が引くくらい分かりやすいです。僕も大学受験時代、これにだいぶ助けられました。。

 

もし新高3生(文系)が読んでたら、ぜひチェックしてみてくれ!!

www.nhk.or.jp

 

次にキホンのホ

b)ゲノムワイド関連分析

 

この分析手法が、現在のメジャーらしいです。英語にしたときの頭文字をもって、GWASとも言います。

 

要は、従来の手法は「遺伝子の一本釣り」と呼ばれて、病気を持つ人と健康な人の遺伝子を比較して、「この遺伝子が悪い!」っていうのを特定して調べていました。

 

しかしそれだと効率が悪いので、「ワイド」関連分析の名の通り、新しい手法は一度に複数の遺伝子やスニップを調べます。

 

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※スニップ・・・ゲノム上で、1塩基だけが他の塩基に置き換わったもの。塩基とは、AとかTとかCとかGのやつです。片方の人が「ATG」の並びでもう片方が「ACG」だった場合、真ん中のTとCが違います。この箇所をスニップと言います。

 

最後にキホンのン

c)セントラルドグマ

 

これは、体内の遺伝情報の流れを規定する、地球上の全生物に共通の非常に尊い原理です。

 

ここまでさんざんDNAのことを話しておいてなんですが、DNAは直接的に体内で何かをしているわけではありません。

 

実際に体内で機能しているのは、タンパク質です。タンパク質は、必要な場所で必要な量だけつくられますが、DNAとタンパク質の間に入ってその調節をしているのは、RNAです。

 

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僕の好きな野球で例えるなら、監督である「DNA」が全体の大まかな指示を出して、コーチの「RNA」がその指示内容を具体例に落とし込みます。そして試合で実際に働くのは「タンパク質」、みたいな感じですかね。

 

この一連の流れを指して、セントラルドグマと言います。

 

2.高橋さんが代表を務めるジーンクエストは何やってるの?

 

ある意味、ここからが本題です。復習だけでも大分カロリー高かったな。。

 

この本の著者である高橋さんは、ジーンクエストという会社の代表です。

 

何をやっているのか、一言で言うとゲノム解析サービス」です。

 

印象に残っているのが、「遺伝子検査」とはまた別のものだよと、本中で高橋さんが仰っていたことです。

 

そもそも、日本語では"遺伝子""遺伝"「≒」だと捉えられていて、"遺伝子"による病気や体質が、必ず次世代に受け継がれる("遺伝"する)と想像しがちです。

 

ただ実は両者は「≠」の関係で、英語でも"遺伝子"はgene、"遺伝"はheredityと、全く別の単語として扱われています。

 

具体的な違いは、各英単語を注意深く見ていくと分かります。

 

まず前者のgene(遺伝子)は、ギリシャ語の「生む」「生み出す」という意味の単語に由来します。つまり「きっかけ」です。

 

そして後者のheredity(遺伝)は、遺伝以外にも「相続」という意味で使われます。

 

確かに遺伝子(gene)は、その人の体質や疾患リスクへの影響を「生み出し」ます。ただ、もちろん決定的な要素になる場合もありますが、多くは「きっかけ」にしかなり得ません。

 

その上で、ジーンクエストが調べるものは、生活習慣にも影響される疾患のみです。

 

つまり、きっかけにしかならない遺伝子ですが、ジーンクエストで調べる疾患は、そのきっかけにすら、遺伝子単独ではなり得ません。(→生活習慣と関わってくる)

 

なので、ジーンクエストのサービスで「遺伝子検査」の言葉を使うのは、しっくり来ないのだそう。

 

それに加え、ジーンクエストでは特定の遺伝子のみを調べるのではなく、30万箇所のスニップ(他人と塩基配列が微妙に違う箇所!)を調べます。

 

遺伝子よりも広く調べるという意味では、ゲノムと呼ぶ方がより適切です。

 

まだ続きます。そうです、ここで終わってしまうとジーンクエストのサービスが「ゲノム検査」になってしまいます。でも、高橋さんは「ゲノム解析」だと仰っています。

 

検査という単語には、病気かどうかを判断するニュアンスが含まれています。

 

しかしジーンクエストでは、病気とは異なる体質も扱います。お酒が飲めなければ病気、というわけではないですよね。

 

ジーンクエストが行うのは、病気の検査でもなく、また医師による診断でもありません。現在の研究から分かっていることをそのままユーザーへと返します。その意味で検査ではなく純粋な解析、と呼んでいます。

 

具体的には、「あなたと同じスニップを持つ人は、ある病気に1.2倍なりやすい」みたいな感じです。

 

少し上でも書きましたが、この解析結果は、自分の生活習慣次第でいかようにもできます。

 

ジーンクエストとしては、具体的な数値を見ることで、行動を変えるきっかけにしてほしいと願っているのだそうです。

 

3.生物学と生命科学の違いとは

 

ここまで読んでくれた方は、皆さん偏差値が6くらい上がってるはず。でもそれは、生物学の偏差値です。

 

そうです、僕がここまで長々と話してきた内容は、基本的に知識です。言い換えると、記憶するもの。

 

皆さんがこれまで学校で習ってきたように、生物学では個別な事象の観察に重点が置かれています。

 

具体的には「この生き物にはこういった特徴があって、別の生き物には違う特徴がある。だからこの2種類の生物は、こういった生態の違いがある!」といった感じです。

 

一方で、ジーンクエストの事業内容も含めて、これから盛んになっていくのは生命科学の分野です。

 

生命科学とは、高橋さんの言葉をお借りすると、「生命に共通の法則性を解き明かし、それを活用する学問」です。

 

「法則性」のところだけ、もう少し詳しく見ていくと、法則性を見つけるとは、次の3つの特徴を満たすことなんだそうです。

 

  1. まずは現象を「再現」できること
  2. そして、まだ起こってない事柄を「予測」できること
  3. さらに、望んだ方向へ「変化」させられること

 

この「再現」「予測」「変化」の3要素を満たしたとき、それは法則になります。

 

僕は、この生命科学の定義について読んだとき、「ゲノムは究極の個人情報である」という言葉の意味が、少しわかったような気がしました。

 

この言葉、皆さんも聞くことがあると思いますが、ぶっちゃけ、僕はピンと来てませんでした。いや、アマゾンとかグーグルが持ってるデータの方が価値あるでしょ、と。誰が何を買って何を検索したかの情報の方が、みんな気になるでしょ、と。

 

でも気づきました。それらの情報って、実は全部「過去」のものなんです。

 

一方、法則性の要素である「再現」「予測」「変化」に照らし合わせて、めちゃくちゃ極端な言い方をすれば、ゲノムは「未来」の情報です。

 

何を買ったか、何を検索したかを「再現」して、何を買うか、何を検索するかを「予測」する。そして、何を買わせるか、何を検索させられるかの「変化」まで踏み込める余地があります。

 

どっちの情報が欲しいかと言えば、言わずもがなですよね。

 

ただ、この項のオチとして、現在ゲノムデータの保存先として業界トップ2を走っているのはAWSとグーグル・ゲノミクスであるという事実を、お伝えしておきます。

 

4.今後のテクノロジーと社会の在り方を考える

 

ここまではジーンクエストの事業を中心にゲノムとか生命科学の話ばっかりしてきましたが、最後はもう少し視野を広げて、「今後のテクノロジーと社会のあり方」について考えていきます。

 

僕、この類の話になるといつも思い出すのは、中学時代の数学の先生の話です。

 

その先生は、普段すげーチャランポランで、生徒からの評判もそんなに良くなかったんですが、ある時、ふと言ったその名言が、今でも頭の中に残っています。

 

いいか、この世の中にはな、危険なモノなんてないんだよ。

あるのは、危険なヒトだけだ。

包丁だって、本当はすごい色んな物を切れる便利なモノなのに、

危険なヒトが手にするから人を刺すのに使われる

 

この言葉、汎用性が高すぎて、今までのどの公式の覚え方よりも、スーッと頭に入ってきました。

 

今、テクノロジーの発展スピードは本当にすごくなっていて、もうとうに僕たちの頭で理解できるペースではなくなりました。

 

そして今後、ムーアの法則じゃないですが、その差はどんどんと開いていきます。

 

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高橋さんは、その際に重要になってくるのは「過去から未来への流れを含めた議論」だと言っています。

 

言い換えれば、「今だけを見ていたらダメだよ」ということです。テクノロジーの進歩の速さに飲まれて、すごい狭い時間軸で目の前の現象を捉えてしまうと、本質からズレた議論になってしまいます。

 

例えば、自動運転の事故やスマートスピーカーが勝手にしゃべりだすニュースなど、その事象だけを見れば怖くなって、もう止めよう!っていう思いになるかもしれません。

 

しかしそこで、「過去から未来への流れを含めた議論」をしようとすれば、より建設的な議論につながります。「いつ(when)なるか?」はもう僕たちの頭では予測不能ですが、「どう(how)なるか?」はだいたい分かります。

 

いつになるかは分からなくても、自動運転車が町中を普通に走ってる風景や、家でスピーカーに向かって天気やニュースを尋ねるシーン自体は想像できますよね。

 

僕たちには、その「いつかは分からんけど、いつかはまあ、だいたいこうなるだろう」を念頭に置いた議論が必要です。

 

というかそもそも、テクノロジーを「抑え込もう」という発想自体が、無理ゲーです。テクノロジーが発展するのも、僕たちが世界の真理を追求しようとするのも、もうそれは世の理であり、人間の性です。

 

だったら「包丁をどうすれば製造中止に追い込めるか」ではなく、「包丁はどうすればうまく活用できるか、とうすれば危険なヒトの手に渡らないか」について、僕たちは考えていかないとなと思いました。

 

センター試験・生物基礎82点の男が書いたブログなので、学術的な内容で認識の間違いなどがあれば、やさしく教えてください。。

 

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